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サイゼリヤの決算書から判明した、意外すぎる5つの経営戦略

サイゼリヤ店舗の外観設計 日本株
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導入:おなじみのファミレス、その知られざる舞台裏

多くの人にとって「サイゼリヤ」は、ミラノ風ドリアやエスカルゴのオーブン焼きといった定番メニューを手頃な価格で楽しめる、おなじみのファミリーレストランでしょう。友人との語らい、家族での食事、一人でのランチなど、様々なシーンで日常に溶け込んでいます。
しかし、その「安さ」の裏側には、緻密で時に意外な経営戦略が隠されています。企業の健康診断書とも言える「有価証券報告書」を読み解くと、私たちが知らないサイゼリヤの姿が見えてきます。本記事では、財務データから浮かび上がる同社のしたたかな戦略を、5つの視点から解説します。

1.赤字でも配当を止めなかった「株主への強い意志」

コロナ禍で多くの外食企業が苦境に立たされる中、サイゼリヤも2020年8月期に最終赤字(当期純損失34億50百万円)へ転落しました。
通常、赤字期には配当を減額または無配とする企業が多いものです。しかし、サイゼリヤは1株当たり18円の配当を維持。その方針は一度きりではなく、2021年以降も継続されました。
これは単なる「配当維持」ではなく、最も不確実性の高い時期にこそ、自社のキャッシュフロー創出力とビジネスモデルの強靭さを投資家に示すシグナルだったのです。株主との約束を優先する、揺るぎない経営姿勢が見て取れます。

2.国内の苦戦を補った「アジア事業の圧倒的成長力」

国内事業は緊急事態宣言や時短営業の影響を受け、2021年8月期には営業損失72億円を計上。しかし同時期、アジア事業は売上高402億円(前年比28%増)、営業利益44億円(前年比152%増)と驚異的な成長を遂げました。
完全に赤字を埋めたわけではないものの、アジア事業の利益は国内損失を大きく緩和し、経営全体の安定性を支える存在に。サイゼリヤは今や「日本のファミレス」ではなく、アジアを主戦場とするグローバル企業へと変貌を遂げつつあります。

3.正社員ほぼ全員が対象?「従業員への手厚いストックオプション」

ストックオプションは通常、経営陣や幹部に付与されるインセンティブですが、サイゼリヤは正社員ほぼ全員を対象にしています。
例えば2021年の第13-2回新株予約権では、正社員2,153名中1,936名に付与。過去の発行でも同様の規模でした。
これは単なる報酬制度ではなく、「従業員を経営の当事者にする」という経営哲学の表れです。株価や業績を自分ごととして捉えさせ、モチベーション向上と離職率低下につなげています。

4.驚異のV字回復を支えた「強靭な収益体質」

2020年8月期に赤字を出したものの、その後の純利益推移は以下の通りです。

  • 2021年8月期: 17億円(黒字転換)
  • 2022年8月期: 56億円
  • 2023年8月期: 51億円
  • 2024年8月期: 81億円

このV字回復の源泉は、同社独自の垂直統合モデルにあります。原材料の調達から加工、店舗配送までを自社で一貫管理する体制により、売上回復時に利益が爆発的に増加。逆境に強いビジネスモデルであることを証明しました。

5.守りに入らない「飽くなき全国・海外展開」

コロナ禍でもサイゼリヤは攻めの姿勢を崩しませんでした。

  • 2022年12月: 島根・香川に1号店オープン
  • 2023年5月: 青森に1号店オープン
  • さらに2023年11月には「海外店舗500店」を突破。

未開拓地域を制覇しつつ、海外展開も加速させています。この姿勢は、自社の将来への確信と成長への野心を物語っています。

まとめ:サイゼリヤは「ただ安い」だけじゃない

決算書を通して見えるのは、単なる「安くて美味しいファミレス」ではなく、株主・従業員・グローバル市場を見据えた戦略的企業の姿です。

  • 株主への誠意:赤字でも配当を維持
  • 成長の両輪:国内の危機を支えたアジア事業
  • 従業員重視:ほぼ全正社員対象のストックオプション
  • 強靭な体質:垂直統合による驚異のV字回復
  • 野心的挑戦:国内外での積極出店

次にサイゼリヤで食事をする際には、その一皿の向こうに広がる壮大なビジネスストーリーに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

サイゼリヤに関する日経新聞(9/21付)報道の要約

  • 1000店規模への拡大計画
    • サイゼリヤは中国の景気低迷やデフレ傾向を踏まえ、中国国内の店舗数を現在の約500店から2035年までに倍増させ、1000店規模へ拡大する計画を発表した。低価格のイタリア料理を武器に、年間50店以上の出店を目指す。現地法人や食品工場の整備も進め、供給体制を強化する方針だ。
  • 他の日本外食企業の動向
    • スシローを展開するFOOD&LIFE COMPANIESは、2026年9月期までに中華圏の店舗数を約190店(約26%増)に拡大予定。現地の嗜好に合わせた商品開発にも取り組んでいる。
    • トリドールや物語コーポレーションなども低価格業態へのシフトや、日本より安価な価格戦略で出店を加速。日本で培ったデフレ下での効率経営やコスト削減のノウハウを活かしている。
  • 中国のマクロ環境と展望
    • 一方で、日中関係の政治リスクや、中国ブランド志向「国潮」の高まりは懸念材料である。外食市場は成長が続く見通しだが、現地消費者の節約志向をいかに取り込めるかが各社の成長を左右する。
    • 中国の外食市場規模は2024年に前年比6%増の5兆5123億元。2029年にはさらに20%増加し、6兆5913億元に達する見込みで、中長期的な成長余地は依然として大きい。

要注意事項

  • 日本に住んでいて、中国からの親しい友人や親戚を食事に招待するなら、サイゼリヤは避けた方がいい。というのも、この低価格レストランは中国でもあちこちにあり、そこでご馳走すると「格が下がる」「あまり体裁が良くない」と思われるかもしれないからだ。
  • 石破氏の後任を選ぶ日本の首相選挙は10月4日に予定されている。もし反中姿勢の強い右派・高市氏が首相になれば、日中関係は長期にわたり悪化する可能性が高く、在中の日系企業の経営に悪影響を及ぼし、最終的には業績や株価の足を引っ張ることになるだろう。繰り返しになるが、株式投資にはリスクがあり、慎重さが求められる。

※参考:中国のサイゼリヤの店構えのデザインスタイル

以下の画像はオリジナルではなく、すべてネットからの引用です。

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